このカテゴリでは、私が経験した流産のことや、そこから妊娠に至るまでの日々を、少しずつ記していきたいと思います。 ご自身が同じような状況にいらっしゃる方にとって、読むことがつらく感じられる場面もあるかもしれません。 どうか、ご無理のない範囲でお読みいただけたらと思います。
※前編はこちら
👉 【流産・妊活体験記】心から笑えなかった9か月と、妊娠がわかった日【前編】
妊活を再開した理由と、最初のステップ「タイミング法」
流産を経験したあと、わたしたちはすぐに妊活を再開しました。
最初の妊娠がわかり、胸が張ったり、倦怠感があったり……大変だけどうれしい体の変化がたくさんありました。 しかし、それも、スッと戻っていきます。胸の張りが収まり、体が軽くなり、元通りになっていく自分の体。
「戻らないで!」
そう自分の体に訴えても止まってくれません。たった数週間前まで何十年もこの体で生きてきたのに、一度変化を感じてしまうと、それがなくなるのはとても寂しいですね。自分の中から赤ちゃんがいなくなったことを、ひしひしと実感しました。
私は元通りになっていく体にいてもたってもいられず、すぐに妊活を再開したいとかかりつけ医に相談しました。私の場合は、自然流産で、子宮もきれいになっていたことから、次に生理が来たら妊活再開できることになりました。
これまで何度か記事の中で「かかりつけ医」と出てきていますが、私たちは不妊専門クリニックに通っていました。 はじめに妊娠を希望したときに、いわゆる「ブライダルチェック」のような検査を受けるために、自宅近くで評判のよさそうな病院に決めました。
幸い検査では大きな問題は見つかりませんでしたが、早い妊娠を希望していたことから、そちらで時々排卵予定日などを見てもらっていたところ、最初の妊娠がわかったのでした。
(こちらのクリニックは、院長先生がひとりずつ丁寧に会話を重ねながら、それぞれの進め方で妊活に伴走してくれ、さらにメンタルケアも充実していて、とってもよかったです。クリニックを選ぶときには、メンタルケアに注目するといいかもしれません)
最初に始めたのは、いわゆる「タイミング法」。
それまでも排卵前に通院し、排卵日を見てもらっていましたが、ここからは排卵前後に通院し、排卵日確認とその後きちんと排卵しているかまでチェックして、本格的に「タイミング法」を始めることにしました。
繰り返す陰性と、心が追いつかない日々
タイミング法を始めるにあたり、1周期ごとに気持ちが大きくアップダウンするようになりました。
基礎体温も測るようにしていたので、体温の上下に一喜一憂し、 生理前に体が火照ったり、おなかがチクチクしたりするような気がすれば、「もしかして?」と喜び、 生理が来るとがっくし。
(生理前は「生理前 妊娠初期症状」と検索魔に……)
「まただめか」
ただでさえ流産後に自分の体が元通りになることに焦りを募らせていたのに、生理が来るたびに目の前が真っ暗になり、より一層焦りが増幅していきました。
そんな自分に耐えられなくなり、私は基礎体温を測るのをやめました。
測るときは本当に怖くて、体温が下がってなければ安心するし、下がってたら必要以上に落ち込む。 生理が来る前に自分で体温の低下を確認して、わざわざ「だめだった」ことを先取りする必要ないかな、と思うようになったのです。
妊娠していれば、生理は来ない。 どうせだめなときは生理がくるのだから、そのときに落ち込めばいい。 私は、落ち込む回数をできるだけ減らすようにしました。
私は生理周期がある程度安定していたのでできたことかもしれませんが、 基礎体温をやめるという選択は、私にとっては本当に正解でした。
人工授精という選択と、決意するまでの葛藤
「このまま同じことを続けていて意味があるのだろうか?」
もちろん妊娠は確率なので、何ヶ月かタイミング法を続けないと結果が出ないことは理解していました。 でも、排卵→生理というサイクルで一喜一憂を繰り返す中、“何も変わらない状況”に、いてもたってもいられなくなっていきました。
何か、現状を変えるための行動をしたい。
そんな気持ちをかかりつけ医に相談したところ、人工授精(AIH)を提案されました。
正直に言うと、できるだけ自然に近い形で進めたいという気持ちはありました。
でも、そのときの医師のひと言が、私の背中をそっと押してくれました。
「人工授精とタイミング法を同時に進めるのはどうだろう?」
医師は、「どちらで妊娠したかは分からないから、気持ちが少し楽になるかもしれない」とも話してくれました。 その言葉に、私はすごく救われたのです。
白黒つけずに進める選択肢がある。
それは、“自然妊娠にこだわりたい気持ち”と、“少しでも確率を高めたい気持ち”の間で揺れていた私にとって、前に進むためのちょうどよい道だったのです。
私も夫も、検査ではとくに大きな問題は見つかりませんでした。 だからこそ、「不妊治療」という言葉に、自分たちが当てはまるのか戸惑ってしまったのだと思います。もちろん、どんな状況であっても前に進むために選ぶ治療には意味があるし、誰にとっても大切な選択肢。 でも当時の私は、気持ちがまだその言葉に追いついていなかったのでした。
だからこそ、“治療らしさ”を感じすぎずに進められる人工授精の提案は、とてもありがたいものでした。
かかりつけ医は非常に柔軟で、画一的なステップアップの提案(「〇回目で次の段階へ」など)はせず、夫婦の気持ちに寄り添って進め方を相談してくれるところも、とてもありがたかったです。
夫は、私の気持ちが落ち着く方法を一番に優先してくれました。 ステップアップに関しては、気持ちのズレがほとんどなく、自然に進むことができました。
(このときの夫の思いは、別の記事で改めて記してもらおうと思っています。暗いトンネルの中にいる私の姿を見て、自分の無力さを感じたと、あとから話してくれました。)
妊娠判明の日と、ようやく笑えた私
2回目の人工授精を終えたころ。
「今回もダメかもしれない」
一喜一憂したくないから、そう自分に暗示をかけていたけれど、 なんとなく、いつもと違う感覚がありました。
迎えた生理予定日……こない!
翌日……こない!
(ちょっと遅れてるだけだ、どうせだめよ)
2日目……こない!
(朝、恐る恐る、祈りながら目を開けます)
3日目……こない!
4日目……こない!
(え?ほんとに?)
5日目……こない!
6日目……こない!
(これは??????)
7日目……こないっ!!!!!
一週間、生理が来ませんでした。 もう、私の心はウキウキです。
夫にも毎日報告していましたが、 彼は“あの暗いトンネルの中にいた私”の姿を知っているからこそ、検査薬での確認までは楽観視しないよう、きつく言ってくれました。
そして、いよいよ妊娠検査薬での確認。
私は、だめなときは予定通りに生理が来ていたので、今回は根拠のない自信がありました。
でも、やっぱり怖かった。 おそるおそる判定を見てみると……
そこには、陽性のマークがありました。
本当にうれしかった。 心から笑えたのは、実に9か月ぶりのことでした。
その後、かかりつけ医に行き、胎嚢を確認。
前回はここまでだったので、次の「心拍確認」が大きな壁でした。
早く確認したいという気持ちとは裏腹に、時間は全然進んでくれません。
1日、1週間が、とてつもなく長く感じました。
それから2週間後——
「ドクドクドクドクドクドクドクドク」
思っていたよりもずっと早くて、力づよい心拍音。
おなかの中で、こんなに一生懸命動いている命がある。
その瞬間、大粒の涙があふれてきました。
ようやく、自分の中に新しい命が宿ったことを、実感できたのです。
「この命を大切に育てよう」 この日から、私の人生が、大きく動き出しました。
こうして、再び授かった命。
まだまだ不安は尽きませんが、前を向いて歩いていこうと決めた日でもありました。
これからの「マタニティライフ」も、少しずつ綴っていけたらと思います。
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